Kota Urushigaki

漆垣 皓大Kota Urushigaki

セキュリティ研究者 · 大阪大学 五十部研究室

セキュアメッセンジャーをはじめ、日常的に使われている暗号プロトコルの安全性を研究しています。実際に配布されているアプリの実装を解析し、設計上の欠陥を実用的な攻撃として示したうえで、開発元に報告しています。2027年4月から大阪大学大学院の修士課程に進学します。

2027年夏の、応用暗号・プロトコルセキュリティ分野の研究インターンを探しています。

Sender Malicious node Receiver Enc(msg #41) Enc(msg #41) Enc(msg #41) again duplicate check bypassed: no binding to a counter
WOOT ’26論文より:悪意あるストレージノードが、Sessionの重複検知をすり抜けてメッセージをリプレイする様子

研究

Practical Attacks on a Decentralized Secure Messenger Session

USENIX WOOT ’26Kota Urushigaki, Hayato Kimura, Atsushi Tanaka, Takanori Isobe

Sessionは、Google Playだけで100万以上ダウンロードされている、分散型・匿名のエンドツーエンド暗号化メッセンジャーです。2020年末にSignalプロトコルから独自設計のプロトコルへ移行しましたが、2021年のQuarkslabによる監査は移行が終盤に重なったため、現行の設計を部分的にしか対象にしていませんでした。私は実際に配布されている実装をもとに1対1通信とクローズドグループ通信を解析し、2つの設計上の欠陥を発見しました。公開鍵が相互に認証されていないこと、そしてメッセージが単調増加カウンタに暗号学的に紐付けられていないことです。

これらをもとに、悪意あるストレージノードや権限を持たない内部者が実行できる、3種類の新たな実用的攻撃を構築しました。

  • 初回接触時に相手の公開鍵をすり替えるなりすまし攻撃
  • タイムスタンプを偽造し、会話の順序を操作する攻撃
  • メッセージを気づかれずに破棄・リプレイする攻撃

論文では具体的な対策も提案しています。アーティファクトはUSENIXのArtifact Availableバッジを取得しました。

3つの攻撃はすべてSessionの開発チームに報告しました。2026年4月下旬に技術的な評価が届き、指摘の大半が認められました。リプレイ攻撃は、設計上のセキュリティ境界ではなく偶発的なデータベース設定によって防がれているため、現状では悪用不可能と分類されています。2026年7月時点で修正は進行中でした。

2026年8月、米国ボルチモアで開催されたUSENIX WOOT ’26で発表

次の研究:非公開プロトコルのリバースエンジニアリング

修士研究(2027年4月〜)

実際に運用されているシステムの多くは、仕様が公開されていない暗号プロトコルで動いています。修士研究では、実装からその設計を復元し、Tamarinで形式的にモデル化したうえで、開発元自身の分析では見落とされた攻撃を探す予定です。

論文

  1. Practical Attacks on a Decentralized Secure Messenger Session

    Kota Urushigaki, Hayato Kimura, Atsushi Tanaka, Takanori Isobe

    20th USENIX WOOT Conference on Offensive Technologies (WOOT ’26)、米国ボルチモア、2026年8月 · Artifact Availableバッジ取得

  2. 匿名メッセンジャーアプリSessionに対するなりすまし攻撃

    Kota Urushigaki, Hayato Kimura, Atsushi Tanaka, Takanori Isobe

    暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS 2026)、2026年1月

執筆

Three practical attacks on the Session messenger

2026年10月 · ブログ記事(英語)

WOOT ’26論文をわかりやすく解説した記事です。一方向の鍵検証とメッセージカウンタの欠如が、なりすまし、タイムスタンプ偽造、メッセージの破棄・リプレイにつながる仕組みを、図と開示の経緯とともに説明しています。

コード

session-woot

Docker · Python · Swift (iOS) · リポジトリ

3つの攻撃すべてを再現できる、完全にローカルなテスト環境です。Docker Composeで正常なストレージノード5台と、攻撃フックを実行中に切り替えられる悪意あるノード1台を起動します。改変したiOSクライアント3つが送信者・受信者・攻撃者を担い、1つのコマンドラインツールでネットワークの起動から各攻撃の実行までを行えます。

学歴

大阪大学 大学院情報科学研究科 情報科学専攻 修士課程

2027年4月入学予定

大阪大学 基礎工学部 情報科学科

2022年4月 – 2026年3月 · 五十部研究室

ミュンヘン工科大学 交換留学

情報学 · 2024年10月 – 2025年8月

経歴

大阪大学 五十部研究室 特任研究員

2026年4月 – 現在

学部時代の研究を継続し、形式的モデル化と、実装に対するブラックボックス・ホワイトボックス解析を組み合わせて、実運用されている暗号プロトコルの設計上の欠陥を探しています。

株式会社Novagrid クラウドセキュリティエンジニア(パートタイム)

2026年4月 – 現在

約50名規模のアーリーステージのスタートアップで、Microsoft AzureとGoogle Cloudのマルチクラウド基盤の運用とセキュリティ強化を一人で担当しています。

受賞・プログラム

大阪大学 Σ Global Leader Award of Engineering Science

2026年3月

ETHTokyo 2024 ハッカソン Robust Democracy メイントラック 銅賞

2024年8月

ZK Treasure Hunt:プレイヤーの推測にProverがゼロ知識証明で答えることで、宝の位置を一切明かさずに遊べるマルチプレイヤー宝探しゲームです。

イーサリアム財団 PSE Core Program Japan

2024年4月 – 8月

Privacy & Scaling Explorations(PSE)が主催する、ゼロ知識証明システム、回路開発、応用暗号の研修プログラムです。

キーエンス財団 奨学金

2023年8月

スキル

プロトコル解析

エンドツーエンド暗号化メッセージング、鍵認証、リプレイ対策

ツール

Tamarin prover、Frida、Wireshark、モバイルクライアントの改変

プログラミング

Python, C, Swift, JavaScript / TypeScript

ゼロ知識証明

ZK証明システムと回路開発

インフラ

Google Cloud, Microsoft Azure, Docker

言語

日本語(ネイティブ)、英語(ビジネスレベル、EF SET C1)、ドイツ語(初級)